1人暮らしを始めたのは大学を卒業して就職が決まった22歳の春でした。実家から電車で1時間半かかる会社に通うことになったため、思い切って会社近くにアパートを借りることにしました。両親は心配していましたが、社会人として自立したいという気持ちが強く、初めての1人暮らしに踏み切りました。
物件探しから始まった1人暮らしの準備は想像以上に大変でした。家賃、敷金、礼金、仲介手数料など、初期費用だけで給料の3ヶ月分近くかかりました。家具や家電も一から揃える必要があり、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジなど必需品を購入するだけで、貯金がみるみる減っていきました。
引っ越し当日は両親も手伝ってくれましたが、荷物を運び終えて両親が帰った後、1人でアパートにいると急に不安になりました。実家では当たり前にあった温かい食事や家族との会話がないことが、こんなにも寂しいものだとは思いませんでした。その夜はコンビニ弁当を食べながら、本当に1人暮らしができるのか心配になりました。
最初の1ヶ月は失敗の連続でした。料理は全くできず、毎日コンビニ弁当や外食で済ませていたため、食費が予算を大幅にオーバーしました。洗濯物も溜め込んでしまい、着る服がなくなって慌てたこともありました。掃除も面倒で、部屋はあっという間に散らかってしまいました。
転機となったのは、同じアパートに住む先輩社員との出会いでした。たまたまエレベーターで一緒になった際に1人暮らしの話になり、料理のコツや節約方法を教えてもらいました。簡単な料理から始めて、徐々に自炊ができるようになりました。最初は卵焼きやパスタといった基本的なものでしたが、作れるメニューが増えていくのが楽しくなりました。
1人暮らしを始めて半年が経った頃、生活リズムが安定してきました。朝は自分で起きて朝食を作り、仕事から帰ったら夕食の準備をする。洗濯や掃除も定期的にやるようになり、部屋を綺麗に保てるようになりました。家計簿もつけるようになり、お金の管理能力も身についてきました。
現在、1人暮らしを始めて2年が経ちますが、この生活を通して大きく成長できたと感じています。料理のレパートリーも増え、友人を招いて手料理を振る舞うことも多くなりました。時間管理や金銭管理も上達し、社会人としての基本的なスキルが身についたと思います。
1人暮らしは確かに大変で、時には実家の温かさが恋しくなることもあります。しかし、自分のペースで生活でき、すべてを自分で決められる自由さは何物にも代えがたいものです。困った時は実家に相談できますが、基本的には自分で問題を解決する力がついたことが最も大きな収穫だと思います。1人暮らしは単なる生活形態ではなく、人として成長するための貴重な経験だったと心から感じています。